第1日目 3月21日(火)
集合時刻を間違えて1時間以上早く着いてしまった者がいる一方で、乗換駅を乗り過ごし遅れる者などもいたが、夕食時には全員が顔をそろえた。2回目の参加者も複数いたので、食事中会話も多く、リラックスした雰囲気のスタートができた。
ミーティングは駅ロータリーをはさんだ別建物にある自治体管理の会議室を利用したが、参加者はみな適切な行動がとれ、移動に困難はなかった。
ミーティングでは、はじめに翌日の実習に利用されるゲーム(ジェンガ)をしながら自己紹介をさせた。教科「情報」の履修状況や、「情報」・「コミュニケーション」等についての認識に大きなばらつきがあろうと予想されたので、会場側から紹介された参考図書〔西垣通 こころの情報学〕をベースに、情報の定義・情報の伝達・変質/変容・情報化社会の問題点と対処・コミュニケーションツールの多様化と対処・バーチャル化の問題点と対処・「どうかかわっていくか」・「情報学」や「コミュニケーション論」の特性や取り巻く状況…等を概括し、グループ分けしたそれぞれにテーマに沿った課題を出して作業*をさせるなどしながら、翌日の講義を見据えて共通理解の形成を図った。
全員が自主的にメモを取りながらよく話を聞き、参加者相互で協力しながら作業を進めることができた。2時間ほどの時間であったが、時間が経つのが短く感じられたように思われた。
翌日に備え、よく休養をとるように指示してホテルに戻り解散した。
(* 高校生になじみがあると思われる有名人のB5版大ポートレートをあらかじめ十数片に裁断したものを渡し、図柄の一部や紙片の形状などから全体を復元させる作業)
第2日目 3月22日(水)
特に不調を訴えるものもなく朝食を済ませた後、バス乗り場に徒歩(約5分)で移動し社バスにて会場へ向った。
・開講式:挨拶の後、スタッフの紹介と参加者自己紹介
・レクチャー:研究本部フェローによる「メディアと人間のかかわり」
メディアとは何か・人間について(他の動物と違うところ・情報の受け取り方の特徴)・遠隔コミュニケーションの課題・適切な注意喚起・気づいていない情報の提示…等について、受講者への発問・クイズなどを交えながら進められた。参加者は特に緊張した様子もなく、内容の理解にも困難はなかったように見られた。適切な発言も出、よく取り組んだ。
気分の不調を訴えるもの(プログラム実施前から自宅での生活リズムを崩しており、充分な睡眠が取れないでいた)があったが、別室で暫時休み、間もなく復帰した。その後は特に問題は見られなかった。
・コミュニケーションメディア体験
はじめにスタッフから体験する機器の概要説明があった。説明は平易でわかりやすいものであったが、コピー機を扱う者にとっては常識的な「トナー」という言葉/物質が参加者にはあまりなじみがないように思われたので、アドバイザーから指摘し補足説明を求めた。
機器やスペースの都合上、2グループに分け、時間交代で以下のツールを見学・操作体験した。現在普及している機器のルーツとなる機器の体験として、ゼログラフィー:世界で初めて発売された感光紙を用いないコピー機と、ALTO:世界最初のパーソナルコンピュータ。また今後、普及・活用が期待される機器として、Yeti:電子ポスターシステム と、電子ペーパー:コレステリック液晶を用いた光書き込み型デバイス。
それぞれ興味を持って操作・体験した。アドバイザーの年配の者にとってはゼログラフィーなど初期型の機器を見ることで、乾式コピーという機器自体の原理や現行機種への進化・改良の過程がよくわかるところに感慨深いものがあるが、受講者=若い世代には、新しい機器の操作性のよさや今後の可能性に興味関心が強く現れているように思えた。
・昼食:社食にてカフェテリア方式で献立を銘々が選び食事。
・事業所見学:研究室・実験室・図書室・廃棄物集中処理システムなどの実際の現場を見学。
・遠隔コミュニケーション実験:2人ずつの組に分け、作業を行なう2組を除いた他の組は、作業の際にやり取りされるコミュニケーションを観察する実習を行なう。作業を行なう一方のグループは指揮側、他方は現場側とし、指揮側はコミュニケーションツールを通じて現場に作業の指示を出す。現場側は指揮側の指示に従って実物を操作する。コミュニケーションツールとしては、(1)音声会議装置(音声のみ・複数対複数)(2)Light Collabo(相互複数対複数の音声と、指揮側には現場映像、現場側には実物に直接投影される機能を持ったプロジェクター)の2種。作業、観察の組を入れ替わりながらツールの特性に沿った適切なコミュニケーションの仕方について実験実習ならびに考察を行なった。さらに翌日の発表に向けて、課題が出された。
指揮側・現場側、観察側全体を含めて6〜7名のスタッフが付き添い、実習が有意義に行なわれるよう適切な指示をしていただけた。受講者は実習の仕方について戸惑うこともなく、また時間を無駄に過ごすこともなく有意義な実験実習を行なうことができたように思える。
・懇談会:社内喫茶スペースで立食形式。スタッフ・研究者十数名が同席。受講者だけorスタッフ(大人)だけでかたまってしまうこともなく、受講者からもスタッフ等に積極的に話しかけ充分に話を聞くことができたように思える。この後、在籍校の事情により、翌日登校のため1名帰宅。
・ミーティング:会場の好意により、講習会場(会議室)をそのまま借りて実施できた。今後の時程等を指示した後、グループごとに会場からの課題(コミュニケーション実験の観察とまとめ)に取り組む時間にあてた。疲れもたまっており、作業の効率も下がっているように観察された。
・帰宿
第3日目:3月23日(木)
・海外研究者交流(遠隔会議):画像と音声による遠隔会議機器を用いて、米国の関連会社の現地スタッフとリアルタイムでディスカッションした。適時スタッフが通訳に入ったが、受講者はあらかじめ各自が興味を持っている事項を用意し、全員が可能な限り英語で質問した。特に臆することも時間をもてあますこともなく、約1時間を和やかに、また貴重な体験として過ごすことができたように思われる。
・実験結果の分析とまとめ:前日の課題のまとめと発表の準備。プレゼンテーションの手段として、一方のグループは“パワーポイント”、他方は模造紙に手書きというメディアを選択した。それぞれに得意/不得意、機器ソフトを扱うことができる/できない以外の部分(自分たちの企図していることを表現するのにどちらがより適しているか)で、メディアの選択を行なっていた。
会場側からは、昼食前の時間を利用して「触覚マウス」の操作体験実習も提供された。
・昼食
・発表と講評:はじめに各グル−プ約10分の発表と、相互の意見交換を行なった。発表方法の巧拙はさておき、内容としてはよく検討され、示唆に富んだ密度の高いものであったように思われる。ここで、研究スタッフによる「受講者のまとめ作業時の様子」を観察した報告が「コミュニケーション活動の観察」の一つの雛形として示された。さらに実習の講師からそれぞれのグループの発表に関しての講評があった。
・閉講式