第1日目 3月22日(水)
ミーティング…自己紹介、基礎事項(化学)の確認
(1)まずは自己紹介、参加の動機を述べ合った。参加者は化学、食品関係への興味関心が高く、研究者への憧れを抱いており、将来の進路選択と結びつけて参加した生徒が多かった。その後、参加者の緊張をほぐし、コミュニケーションを円滑に行うため、30分ほどお互いの学校の様子、地域の様子などを紹介し合う時間とした。
(2)本会場での実験内容は、化学Uの教科書に記載されている「アミノ酸」が主テーマとなる。しかし、進度や選択科目の関係で、アミノ酸という言葉は知っているものの、構造を説明できる参加者はいなかった。そこで、教科書、副教材(図説)のコピーを渡し、基本的な構造、カルボキシル基、アミノ基の特徴などを約30分ほどで解説した。
その後、ホテル内での注意、明朝の日程、翌日の持ち物を伝え解散した。
第2日目 3月23日(木)
(1)開講式・講義…味の素の紹介、研究員の紹介、参加者自己紹介
アミノ酸の発見、味の素の創設、味の素株式会社が展開する事業とアミノ酸研究との関連等の話がなされた。その後、テキストに基づき、アミノ酸の基本構造、化学的性質、これからの実験の流れについて講義を受けた。特に今回の実験に用いる昆布に含まれるアミノ酸、食品と含有アミノ酸の関連についての解説があった。その後、実験の流れと、その化学的原理が解説された。
(2)実験…昆布に含まれるアミノ酸を湯で抽出、イオン交換樹脂により分離、ロータリーエバポレーターを用いた抽出液の濃縮、等電点にpH調製することでの再結晶の作業を10:30から17:00まで行った。
(3)懇親会…食事を取りながら、参加者の高校生と研究者の交流が図られた。余興として、研究員の方々がアミノ酸に関するクイズを用意し、アミノ酸に関する基礎知識を楽しく学んだ。
(4)ミーティング…前夜、ミーティングの席ではあまり積極的な発言が出なかったため、参加者の一人(男子)を司会者とし、本日一日の感想を各自に述べてもらった。特に、研究者という職業を知りたいということを参加の動機に挙げるものが多かったため、2日目の時点での研究者の印象を語ってもらった。接しやすい、周りとの協調が重要、ハードな仕事、根気がいる、基礎が大切と様々な感想が出、研究者という職業を多面的に捉えている様子が分かった。ただ、私から「実験を通して何か不思議と思ったことは無いかという」問いを発したところ、あまり積極的な発言が無かった。そこで、クイズの中にあったアミノ酸のL体、D体の意味を持参した分子模型で確認し、実験の中でもっと疑問を見つけ積極的に質問するように促した。
第3日目 3月24日(金)
(1)実験…析出したグルタミン酸の結晶を吸引ろ過で取り出した。これを真空デシケーターで乾燥させた。
取り出した結晶の収量を図った後、薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて分析した。取り出した結晶の溶液、グルタミン酸の標準溶液、アスパラギン酸の標準溶液をTLCプレート上にスポットし、展開後ニンヒドリン反応によって確認した。いずれも、ある程度高い純度のグルタミン酸が得られたが、アスパラギン酸が混入している様子が見られた班もあった。
(2)まとめ・発表…まず、うまみ成分のグルタミン酸とイノシン酸の味の相乗効果を体験した。2つの溶液を順番に口に含むことによって、予想外の味の変化に驚きの声が上がった。次に、ワークシートに抽出に用いた昆布の部分、質量、結晶の質量、考察を記入し、2名一組で発表した。アスパラギン酸が混入した理由、グルタミン酸とアスパラギン酸のニンヒドリン反応の発色の差、昆布の部分で含有量が違うのかなどの考察がされた。また、アミノ酸分析器で分析されたチャートとの比較を行った。
(3)閉講式…会場担当者から、科学とは実験を通して自然現象を考えることが重要であること、失敗があってもその原因を突き止めようとすることで新たな発見が生まれること等のお話があった。最後に参加者全員に修了証が手渡された。