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太陽電池と超伝導体を作ってみよう

キャンプ会場
同志社大学 工学部
〒610-0321 京都府京田辺市多々羅都谷1−3
http://engineering.doshisha.ac.jp

キャンプ会期
2005年12月26日(月)17:00 〜 28日(水)15:00 2泊3日

キャンププログラム
 

2つのものづくりのテーマを用意しました。1つめのテーマとして、酸化物高温超伝導体を作製して、液体窒素で冷却し、超伝導状態で磁石の浮上実験を行うとともに超伝導状態になる温度を測定しました。ねらいとしましては、たとえば永久磁石がある一定以上の温度になると磁性を失うように、同じ物質であってもその性質が、温度によって変化することを体験してもらいました。
もう一つのテーマは、色素増感型湿式太陽電池です。現在一般に使用されている太陽電池は、主にシリコンなどの半導体を利用したもので、非常に高価であり各家庭で利用するなどは困難です。しかし、近年考案された色素増感型太陽電池は、材料が安価で理論上同程度の電力が得られることから次世代の太陽電池として注目されています。その構造は、二枚のガラス電極の間に酸化チタンの薄膜と増感色素、電解液を挟んだサンドイッチ型になっています。電解液を封じていることから湿式といいます。酸化チタン膜が利用されるのは、光エネルギーを増感色素が吸収し、放出した電子を効率よく電極に伝えるためです。従来、酸化チタンの薄膜は塗布法により作製されますが、大型化することは困難でした。我々が開発した電気泳動法と呼ばれる方法で製作しますと、均一で容易に希望の厚みの膜を形成でき、大型化しやすい実用的な方法です。今回は、この次世代の太陽電池の製作から発電までを実際に体験してもらいました。

 

体験感想
招待状と挑戦状
梅花高等学校2年生
「うわぁ」私は自分の目の前でおこっていることを見て、こう言ってしまいました。苦労して作りあげたもの―超伝導体―が私たちの目の前でふわっとキレイに磁石を浮きあげたのです。
実験初日、真新しい白衣に身を包み、わくわくしながら実験の手順に耳を傾けていました。そこへ、スタッフの方が近づいてきて、ぼそっと一言・・・「今日の実験は地味で疲れるよ」と。でもその方は「今日、しっかりやらないと明日、うまくいかないよ」と言いのこして行きました。実際のこの日の実験は、薬品を計量し、その試料を交代でひたすら混合したり、XRD回折装置で結晶構造を測定したりという高校ではできない実験で、とても楽しく行うことができました。その中でも、錠剤作製は粉の状態の試料を金型に入れ、一定の圧力をかけることで錠剤の形にする作業は力がいりましたが、とても楽しかったです。
実験二日目。前日に作成して、本焼成の終わった錠剤の厚みや直径をマイクロメーターで計っていた時に、「これは本当に浮くのかなぁ」と少し心配になりました。また、XRD回折の結果も、大学の方の作成したもののグラフと比べても、あるはずの所に波がなかったり・・・・・・と不安でした。しかし、シャーレの中に脱脂綿を入れ、錠剤を置き、液体窒素を入れ磁石をのせると、ちゃんと浮きあがったのです。目の前でおこっている事実。それが私たちの手によって作り出されたものだと考えると本当に感動でした。
ただ、あまり実用的ではないという事実をつきつけられ、私は、未来への招待状と、実用的なものを作り出すという挑戦状をサイエンスキャンプを通じて手渡されたと思いました。
この3日間、素晴しい仲間と出会えて本当に良かったです。

キャンプスケジュール
第1日目
(12月26日)
17:00 17:30 集合【宿舎】
18:00 19:00 夕食
19:00 21:00 参加者&引率者ミーティング
第2日目
(12月27日)
7:00

8:00

朝食
9:35 9:50 会場へバスで移動
10:00 10:30 開講式(講師紹介、参加者自己紹介)
10:30 11:00 ガイダンス(スケジュール、実験法等の説明)
11:00 12:00 実験(両コースとも:薬品の計量・混合)
12:00 13:00 昼食
13:00 16:00 実験
A.「超伝導体」コース:薬品の混合・錠剤作製・簡易反応・粉砕・錠剤作製・錠剤の寸法測定・電気炉で焼成
B.「太陽電池」コース:電気泳動法による酸化チタン膜の作製(2〜3種類の条件)・X 線構造解析・電気炉で焼成
16:00 17:00 実験のまとめ、次の日のガイダンス
17:00 17:30 研究室等見学
17:30 19:00 懇親会(夕食)
19:10 19:25 宿舎へバスで移動
19:30 21:00 参加者&引率者ミーティング
第3日目
(12月28日)
7:00 8:00

朝食

8:35 8:50 会場へバスで移動
9:00 12:00 実験
A.「超伝導体」コース:錠剤の寸法測定・X 線構造解析・錠剤への温度センサの取り付け等
B.「太陽電池」コース:酸化チタン膜のX 線構造解析・電池の作製
12:00 13:00 昼食
13:00 14:00 実験
A.「超伝導体」コース:超伝導特性の実験
B.「太陽電池」コース:電灯の光を用い、照度を変化させて発電量を測定
14:00 14:45 実験のまとめ(研究発表、ディスカッション)
14:45 15:00 閉講式
15:00     解散【大学】


アドバイザー(高校理科教師)の開催報告
京都府立桂高等学校 教諭
 
A「超伝導体」コース
<1日目:12月26日(月)>

参加者到着、受付
駅から宿舎までの道に迷い1時間程度遅れてくる参加者があったが、概ね順調に集合できた。
ミーティング
全員の自己紹介と諸連絡、諸注意等の伝達をして短時間で終了した。

<2日目:12月27日(火)>
朝食
風邪気味でほとんど食べられない参加者もあった。
開講式・ガイダンス
開始直後に体調不良で嘔吐する参加者があり、保健センターで休養させ、医師の診察を受けたあと、宿舎で終日休養させた。
実験開始
薬品の計量・混合、X線回折装置で混合物の構造解析。
錠剤の作製、寸法測定で初めて使うマイクロメーターに戸惑う生徒が多かった。
電気炉にて仮焼成 その間、実験概要等について講義。
再度、粉砕・混合 X線回折装置で解析。
空き時間を使って実験のまとめ・発表に使うコンピュータのチェック。
本焼成準備。
全体に時間が不足し、研究室見学は行えなかった。
懇親会
スタッフ以外の大学院生も交えて、大学での研究の様子や参加者の自己紹介・感想を発表して交流。風邪気味の参加者1名が先に宿舎に戻って休養をとる。
ミーティング
各班で翌日の発表のための実験のまとめ、各班ともコンピュータを使って作業を行う。各班とも21:00までには終了。パワーポイントを使っての発表準備は各班とも手際よく、慣れた参加者が多いことが窺われる。

<3日目:12月28日(水)>
朝食
前日、休養をとった参加者も快復する。
実験開始
本焼成後の錠剤の寸法測定・X線構造解析、3回の構造解析結果の比較。
液体窒素を使って、超伝導状態から常伝導状態への転移温度の測定。
発表準備
パワーポイントを使って発表のまとめを作製。
実験のまとめと閉講式・講評
各グループごとに発表するが、帰りのバスの時間の都合により、途中で修了証を受け取り退出する参加者も多かった。

三重県立相可高等学校 教諭
 
B「太陽電池」コース
<1日目:12月26日(月)>

集合受付(駅から徒歩にて宿舎に来る予定の生徒から、道がわからなくなったとの電話連絡がある。近くの駅に戻りタクシーにて宿舎に来ることを支持した。しばらくして無事到着した。)
夕食(あらかじめ到着が遅れる届けがあった1名を除き全員で夕食をした。その後、ミーティングについての指示を行った。 遅れて到着した最後の1名も途中で食事に参加し全員食事を終える。)
ミーティング(各自、自己紹介の後、翌日からの日程説明、宿舎での注意事項(外出禁止、就寝時間、貴重品管理、自販機の利用について、マナー等)を行い、翌日からの日程に備えて就寝時間を守るように指示して解散した。)

<2日目:12月27日(火)>
開講式(講師紹介、途中気分が悪くなった生徒が嘔吐したため中断する。事務局引率者が大学の救急医療センターへ引率し、その後、アドバイザーで会場のプログラムを進行させた。)
ガイダンス(スケジュールの説明、実験方法等の簡単な説明を受ける。)
3人1組の4班で太陽電池の製作を行った。まず、酸化チタンの薄膜の材料の計量を行い、酸化チタンを純水に溶かす作業を行った。生徒は、防塵マスク、保護めがね、白衣、手袋を着用し慎重に計量作業を行った。電子天秤やかくはん器(スターラー)を初めて使う生徒は最初少し戸惑っている様子が見られたが、しだいに慣れスムーズに作業を行っていく様子が見られた。
午前中に作成した酸化チタン溶液を使って、電気泳動により伝導性ガラスに薄膜をつくる作業を行った。各班、条件を変えて3種類の薄膜を製作した。その後、乾燥させる時間を利用して、最終日に発表する学習のまとめをパソコンを使って整理した。また、この間に製作した酸化チタン膜の構造をX線回折装置を使って調べた。その際に、研究室にある研究装置および現在研究室で行われている研究内容を解説してもらった。(救急センターで休んでいた生徒は、午後に医師の診断を受けた。病状は急性の胃腸炎とのこと、本日は、宿舎で休ませることになり、事務局引率者に引率してもらって宿舎に戻った。また、保護者にも連絡をとってもらった。)
懇親会(立食形式で行われ、研究室のスタッフメンバーの自己紹介の後、参加者の自己紹介が行われた。またこのキャンプへの参加した目的や当日の実験実習の感想などを発表し合った。参加者の中には、研究室の大学院生に研究内容について積極的に質問をする場面も見られた。また、実験班で知り合いになった生徒間で和やかな会話がかわされた。)
ミーティング(翌日の日程、および各班で行なう発表方法について説明を行った。その後、班別に、発表に向けてのプレゼンテーション作りを行った。当日の製作実習は、とくに休憩時間を設けずに連続して行われたので全員かなり疲れている様子が見られたので、実験・実習の記録を整理させた後は、翌日の発表内容の検討は21:00を目標に済ませ、早く終了した班から部屋に戻らせ休息をとらせるようにした。各班とも、短時間でうまくプレゼンテーションの大筋を作り、発表の準備を行なって部屋に戻った。

<3日目:12月28日(水)>
昨夜の間に大学院生のスタッフによって焼成してもらった酸化チタンの薄膜に色素を吸着させる作業を行った。1つは、Ru、他の2つはエオシンYを電気泳動法を使って行った。空いている時間を利用して、発表用プレゼンテーションを製作した。色素を吸着させた薄膜と導電性ガラスにカーボンを塗ったガラスにスペーサーを取り付け、ヨウ素溶液を入れて太陽電池を組み立てた。
午前中に組み立てた太陽電池を光源にセットし、発電量を測定した。また、できた太陽電池を部屋から出し、太陽光の下でモーターにつないでモーターが回るかを試した。うまくできた電池は、強い太陽の下ではモーターを回す事ができ、モーターにつけたプロペラが回りだすと歓声が上がった。また、発電量の少ない電池を直列につないでモーターを回す実験に挑戦する班もありこれもモーターを回す事ができた。
実験のまとめ(発表会)が行われた。解散予定15:00で帰路を予定していた参加者の為前半と後半に発表を分けて行った。いずれの班も短時間にまとめた内容とは思えないほど素晴らしいプレゼンテーションを行い、各班で製作した太陽電池の製作過程や酸化チタン膜の製作条件の変化と発電量の関係や製作過程での電気泳動法での電流・電圧変化と膜の関係をうまくまとめた発表がなされた。発表は前半で中断し、修了証書授与をもって閉講式とした。後半の発表も素晴らしく、それぞれの班が個性的なプレゼンテーションを行って終了した。
開催状況部分のみとなります。

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