<1日目:3月24日(水)>
清水建設株式会社技術研究所でのスプリング・サイエンスキャンプは、全国から12名の高校生たちが大きな期待を持って集まり、環境創造グループ長の那須守先生(総括担当)よりプログラム紹介を頂き30分繰り上げて始まりました。参加者で自己紹介を兼ねた名刺交換ゲームを行い先生方と生徒の顔合わせと緊張をほぐしました。開校式では「20世紀は工業化の時代で化石燃料をエネルギーとして生活改善してきた反面、地球を痛め自然を破壊してきた。21世紀は環境の時代と言われ自然との共生社会を創ることが求められています。環境についてThink globally Act locallyを実践してください。積極的に外に出て多くの人と接して、それから多くのことを学んでほしい。」と矢代技術研究所副所長よりお言葉をいただきました。
技術研究所の施設見学は、まず今回のテーマ「ビオトープ・ワークショップ」として最先端技術による屋上ビオトープの見学をし、詳しく説明を受けた。そして、音響実験棟ではコンサートホールの設計に利用される無響室やマンション等の室内・廊下の遮音・床衝撃音について実験を交えて説明を受けた。サイバー実験棟では最新の情報通信技術や電磁環境技術についてテレビや携帯電話を使って実験を交えて説明を受けた。このように、最先端技術を目の当りにすることが出来ました。
その後、ワークショップの課題である「近隣の都立第三商業高校の屋上につくるビオトープ計画」の計画手順について横田樹広先生(3班担当:模型)よりモデル計画地、計画・設計の条件、周辺地域の様子、越中島の地誌、周辺環境調査の視点、そもそもビオトープとは、ビオトープの目標設定等の説明を受けて、生憎の雨模様の中、ビオトープ計画地の周辺調査に越中島小学校(敷地内の子供達が作った色々なビオトープを見学し、その役割や維持管理について考える)と東京海洋大学(構内の植物が、どのような生物に役立っているか周辺の環境にどのように影響を及ぼしているか考える)に出かけた。
屋上ビオトープについて、薬師寺圭先生より軽量化を図りながらの土地造形や水やりの手間や水の量を削減するための底面かん水方式などのハード面とこのビオトープに来る生物について詳しく説明を受けた。盛り沢山の内容と生徒の質問に対して丁寧に答えていただき予定を30分繰り下げて初日の講義を終了した。
懇親会(夕食)は参加者全員の自己紹介をはじめ会食しながら和気藹々とした雰囲気の中、江原浩隆(総務担当)をはじめ技術研究所の皆様と親しく懇談ができ懇親を深めるとともに、その人柄にふれあい高校生の今後の人生の在り方に大きく影響したと思われます。
ホテルに到着後ミーティングを行い、事務連絡、感想文・アンケートの依頼、参加者の帰路の確認およびフォロー、翌日の予定について確認した。自己紹介・親睦は懇親会で十分に出来たので簡単に済ませ、自分が作りたいビオトープについて話し合いを持った。
<2日目:3月25日(木)>
はじめに、林豊先生(1班担当:CG)より「ビオトープと生態系」について話していただいた。ビオトープの語源の説明を受けビオトープが意味することを理解するとともに、生態系ピラミッドを用いて生態系および生物多様性について理解を深めた。ビオトープの重要性や開発等による生息地の回避・補償・創出およびその配置・形状について説明を受け理解した。都市型ビオトープの実験例としてユニット型ビオトープを紹介していただいた。都市のビオトープの効果的配置として山から都市へと繋がるビオトープ・ネットワークの構築について説明を受けた。
次に、中村健二先生(2班担当:CG)より「ビオトープと街づくり」について話していただいた。世界に先駆けて行われた山梨県大月市猿橋町の大規模宅地開発におけるニホンリスを保全した街づくりの実践事例の説明を受け、道路によって分断された生息地に橋(リスの通り道)を設けることで生態系保全されたことを理解することが出来た。
午後は、フェリス女学院大学緑園キャンパス(横浜市泉区)へ貸切バスで移動して大学生による参加型ビオトープ活動を紹介していただき、ビオトープの育成管理体験を大学生と共に行った。その後、エコキャンパス・ツアーを行い屋上緑化、雨水利用、生ごみの堆肥化など、地球環境・自然環境に配慮したさまざまな取り組みを見学した。また、エコキャンパス研究会の大学生との交流を通してビオトープを計画・設計・作成した大学生の体験談を聞き、質問、ディスカッションなどを行った。国際交流学部の本間教授をはじめエコキャンパス研究会の学生の配慮により予定された内容をほとんど体験できたことは大変貴重なものとなった。
ホテルに戻り夕食をとった後、生徒はすぐ翌日のビオトープづくりの準備に取り掛かり、時間を忘れて午後11時まで取り組んだ。また、那須先生をはじめ4名の先生方がわざわざホテルまで来て熱心に生徒の指導に当たっていただき頭の下がる思いがした。
<3日目:3月26日(金)>
前日に検討したビオトープ計画を1班と2班はビオトープ・プランニング・ナビゲータというソフトのCG作成部分を使って、地形、地表面、植物等を配置し、ウォークスルーで仮想体験をしながら計画を完成させていきました。3班はスチレンボード、針金、スポンジ等を使って、ビオトープの模型を作り、盛り込む環境要素の配置や大きさ、景観を確認しながら計画を完成させていきました。
1班(稲村、木村、高嶋、長谷川)は見て楽しいゾーン、食べておいしいゾーン、生物の楽園ゾーンの3ゾーンに分けてCGを作成した。2班(岡田、小田原、兜、山口)は学びといこいの場をテーマに人が休めて生物と触れ合える、授業に利用できる、生物が休めるビオトープを計画してCGを作成した。3班(鹿野、谷田、千葉、徳永)は田園風景をコンセプトに自然と触れ合え、休耕田を利用して水を浄化でき、人が入れるゾーンを制限した模型を作成した。どの班も時間がない中、担当の先生方の熱心な指導の下、2日間の学習成果が出た立派なものが出来上がった。模型をはじめ、その出来ばえを表現できないのが残念である。
各班20分間で成果を発表し、その後10分間ディスカッションを行いました。発表では最終成果(計画)だけでなく、何故、その結果に至ったのか、議論のプロセス(合意形成の過程)についても説明した。
講評をビオトープづくりのプロの小田信治先生と小田原卓郎先生よりいただき、3班共に合格点をいただきました。良かった点は生き物のゾーンと人のゾーンを分けたこと、食べ物のゾーンは新しい視点、軽量化や水の浄化など考慮したことなど褒めていただいた。考慮した方が良い点は地域性を考えた植物や生物のことの説明がなかった、各ゾーンに対する配慮を十分にすることなどの指摘をいただきました。
閉校式では堺谷光孝副所長より生徒一人一人にキャンプの修了証が手渡され、生徒からは各先生方に寄せ書きを手渡しお礼をしました。このワークショップを通して人と自然のかかわり方や、都市の生態系の回復について理解や関心が高められたことと思います。2泊3日の限られた期間に盛り沢山の内容を体験できたのは、ひとえにきめ細かく入念に準備された技術研究所の皆様のお陰だと、深くお礼を申し上げます。那須先生をはじめ多くの研究者、スタッフとふれあえて大変楽しいサイエンスキャンプでした。