サイエンスキャンプ
HOME HOME
開催報告 開催報告トップ
ウィンター・サイエンスキャンプ2003-2004 ウィンター・サイエンスキャンプ2003-2004 トップ キャンプ開催概要 キャンプ参加者 プログラム報告

ライフサイエンス事始め〜細胞の培養と遺伝子の導入に挑戦しよう〜

キャンプ会場
東京大学大学院 総合文化研究科
〒153-8902 東京都目黒区駒場3−8−1
URL:http://www.c.u-tokyo.ac.jp/index-j.html

キャンプ会期
2003年11月22日(土)午後0時30分〜24日(月・振替休日)午後3時15分 2泊3日

キャンププログラム
 
私たちの身体は約60兆個もの細胞から成り立っています。そして、その細胞一個一個には身体全体を作るのに必要な約3万個の遺伝子を収容した核があります。細胞がいかにして身体各部の組織をつくりあげるのか、いかにして特定の遺伝子だけを選択的に発現させるのかを知ることは「がん」や「老化」などの問題を解明することにつながります。
今回のサイエンスキャンプでは、細胞と遺伝子に関するライフサイエンスの基本になる細胞培養と遺伝子発現に関する講義と実験を行いました。
 

体験感想
研究者になりたいです
東京女学館2年生
私は、今回のサイエンスキャンプは2度目の申し込みでやっと行く事ができました。申し込んだ理由の一つ目は、自分が就きたい仕事はどういうものかを確かめたいから。二つ目は、本で読んでいるだけでは、自分の興味、探求心が満たされなかったからでした。そこで東京大学大学院総合文化研究科の「ライフサイエンス事始め」に参加しました。
実習前の講義は約2時間と長いものだと思っていましたが、実際は聞き足りないくらい面白いものでした。実習は絶対学校では体験する事のできないものをやりました。教授の方や大学院生の方々が一人一人と向きあって、丁寧に質問に答えてくれ、確実な理解を得る事ができました。
ニワトリの胚の解剖では、生きたままニワトリの胎児を解剖し、胸を開いたら心臓が動くのが確認できました。そのニワトリの心筋と胸筋は、バラバラにした細胞の状態でも培養すると、融合細胞になる事を知りました。また、緑色蛍光タンパク質(GFP)を細胞に導入したところ、自分で導入したものが本当に光っていました。とてもきれいで、じきに消えてしまうのがもったいなかったです。他にもGFPを導入されたマウスやナスを見ました。これが将来医療に活かされるそうです。そして、制限酵素を用いてDNAを切る実習では、電気泳動をかけて、DNAの大きさを調べたり、大腸菌を操作し抗生物質に強い大腸菌を作ったり、金魚の動くウロコの観察をしました。驚きの連続でした。
この3日間、最新の技術を体験し、自分の中で理解できました。その他にも、同じ志を持った同世代の子と知り合いお互い励まし合ったり、生物が好きなだけで友達になることができうれしかったです。
今度あの研究室に行く時は、研究者として帰りたいです。これからも常に探求心を持っていきたいです。

キャンプスケジュール
第1日目
(11月22日)

12:30      集合【大学】
13:00 13:15  開講式
13:15 14:45  細胞培養に関する講義、遺伝子導入植物
15:00 18:00  実習(ニワトリ胚の解剖、細胞の採取と培養の開始、金魚の鱗細胞
 keratocyteの培養開始)
  18:00 19:00  宿舎へ電車で移動
  19:00 20:00  夕食
  20:00 21:30  参加者&引率者ミーティング
第2日目
(11月23日)
7:00    朝食
8:30 9:00  会場へ電車で移動
9:00 12:30  遺伝子に関する講義、細胞(培養細胞および大腸菌)への遺伝子導入
12:30 14:30  昼食
14:30 18:00  細胞の観察、蛍光抗体法による筋分化の観察、keratocyteの運動の観察
18:15 19:45  懇親会(夕食)
  19:45 20:15  宿舎へ電車で移動
  20:15 21:30  参加者&引率者ミーティング
第3日目
(11月24日)

7:00    朝食
8:30 9:00  会場へ電車で移動
9:00 12:10  導入した遺伝子の発現の確認(1)
12:10 13:00  昼食
13:00 14:30  細胞の観察、導入した遺伝子の発現の確認(2)
14:30 15:15  修了式
15:15      解散【大学】


アドバイザー(高校理科教師)の開催報告
東京都立八王子北高等学校教諭 土方敏行 先生

写真
<1日目:11月22日(土)>
 大学院講義室での開講式に続き、まずは松田先生ご自身による細胞培養に関する講義がありました。東大大学院の先生から直接お話しが伺えるとあって、参加者の目も真剣そのもの。講義を聞きながら要領よくノートをとることのできる参加者が多く、彼らのレベルの高さを予見させました。
 その後、別棟の実験室に移動して実習が開始。遺伝子導入植物(タバコほか)の観察、ニワトリ胚から採取した組織(胸筋と心臓)の培養、および金魚の鱗細胞(ケラトサイト)の培養実験などに挑戦しました。盛りだくさんの内容のため、予定時間を大幅に越えることとなりましたが、どの生徒も集中力を切らすことなく、真剣かつ楽しそうに実習に取り組んでいました。
 実習終了後は、片づけも早々に全員が駒場東大前駅まで小走りで移動し、急いで電車に乗りました。宿舎となった笹塚のホテルには、レストランの営業時間ぎりぎりに到着。参加者全員が、どうにか夕食にありつくことができました。その後、ふたつのグループに分かれてミーティング。「あわただしかったけれども、密度の濃い一日だった」、「期待通りの内容で明日も楽しみ」等の感想が述べられました。

<2日目:11月23日(日)>
 朝一番は、39℃もの高熱を押して来てくださった石浦章一先生による「生命科学でわかること」の講義。東大女子学生の人数の推移からお話しが始まり、途中いくつものクイズを織り交ぜながら、ワクワクするような話題を次々と提供してくださいました。
 続いて笹川 昇先生ご指導による遺伝子導入の実験。ひとつは、アフリカミドリザルの腎臓由来培養細胞に、オワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子(通称GFP)と脂質の複合体を加えるというもの。笹川先生の「専門用語を使って説明する部分もあるので、最初は大変でしょうが、これこそが研究の最先端にいることの証でもあるわけですから、その雰囲気をおおいに楽しみましょう!」とのアナウンスに、一同頷きながら実験を開始しました。
 次は、制限酵素を用いてDNAの断片を作る実験。数種の制限酵素を、組合せを替えてそれぞれDNAに加えました。そしてもうひとつが、遺伝子組換え大腸菌作り。抗生物質耐性遺伝子を組み込んだ大腸菌と、そうでないもの(対照)を用意し別々に培養しました。
 昼食の後、1日目に採取・培養した胸筋と心臓の細胞を各自観察。筋芽細胞が複数融合して多核となった「筋管細胞」などを観察し、さらに蛍光抗体法による筋分化の観察等を行いました。
 この日、高校生が一様に歓声を上げたのが、GFP導入マウスでした。暗い部屋で紫外線ランプを当てると、愛らしいマウスの耳や足、尾などがきれいな緑色に発光しました(解剖すると内臓まで光るとのこと)。
 最後は、生協食堂に移動しての懇親会。ご馳走をほおばりながら、指導にあたってくださった諸先生方、およびTA(大学院生・学部生)のみなさんと楽しく歓談することができました。

<3日目:11月24日(月・振替休日)>
 遺伝子導入実験の続きとして、電気泳動法によるDNA断片と発現タンパク質の確認等を行いました。
 昼食後は、片対数方眼紙に検量線(マーカーDNAのバンドパターンを読みとって作成) を引き、それを基準に各自が自分で切ったDNA断片の長さの推定を試みました。時間の関係で、制限酵素断片地図作成実習」はできませんでしたが、配られた解答に、みな興味深く見入っていました。
 続いて培養中のケラトサイトを観察。金魚の鱗から遊離したケラトサイトが顕微鏡下でゆっくりと動くところを観察しました。
 そして、キャンプの最後を飾ってくださったのが、総合文化研究科長の浅島 誠先生。浅島先生は、自ら発見したアクビチン(濃度に応じて未分化細胞を異なる組織や器官に誘導するタンパク質)により、試験管の中でカエルの未分化細胞から眼球を作り出すことに成功し、それをカエルに移植したら目として機能したことなど、発生生物学および臓器再生研究の第一人者ならではのお話しを、それはわかり易く解説してくださいました。
 その後、浅島先生からひとりひとりに修了証と記念品が手渡され、3日間のウインターサイエンスキャンプは無事終了となりました。


東京都立南多摩高等学校教諭 北川英一 先生
研究機関のご好意で、当初の募集人数16名を大きく上回る43名で実施された。内容は高校レベルではかなり難しく、盛りだくさんであったが、参加生徒は総じて熱心に取り組み、ウインター・サイエンスキャンプの所期の目的は十分達成されたと思う。
それは、次に拠るところが大きいように思う。「生命科学でわかること」への俯瞰的な見地から、具体的な個別の実験内容へ、と実に有意義な構成内容であった。
・最先端の科学研究へ接することで、現在の課題と見通しが示された。
・指導者の研究と教育への熱意が十分に伝わった。
・多くの大学院生によるきめの細かい指導があった。
 時間的に不十分な内容もあったが、消化不良であることが未来へのつながりも予見させるように感じられ、それらも総じて有効であったと思われる。
開催状況部分のみとなります。
前のプログラムへ 生命のミクロとナノの探求と冒険超伝導を作ろう知ろう・創ろう自然エネルギーライフサイエンス事始めのぞいてみよう!光の科学体験しよう!風力発電の技術環境にやさしい新素材(グリーンコンポジット)を作ろう遺伝子からタンパク質へ細胞の世界を探ろう燃料電池を作って水素から電気を起こそう新素材のゆりかご Welcome to materials research frontier ! 次のプログラムへ

ウィンター・サイエンスキャンプ2003-2004開催報告トップ開催概要キャンプ参加者プログラム報告
このページの先頭へ

財団法人 日本科学技術振興財団
振興事業部
サイエンスキャンプ事務局
〒102-0091 東京都千代田区北の丸公園2番1号
TEL. 03-3212-2454  FAX. 03-3212-0014
E-mail
日本科学技術振興財団HP
科学技術館HP
日本科学技術振興財団振興事業部HP
(C) 2012 Japan Science Foundation All Rights Reserved.