<第2日目:11月23日(日)>講義と実験 朝食も同じくロビーで、他の泊まり客と同時であったので、一斉にはできなかった。電車で向かう生徒達は元気いっぱいであった。 まずは、科学は自然哲学であり、「思弁」と「帰納」が基本であり、結果がどうであるかではなくその「方法」が大切なのであるという科学者のあるべきスタンスについての導入があり、ゲノムとは何か、それをどう現実的に把握するかの方法についての講義と実験が行われた。 基礎的な遺伝子導入実験として「抗生物質に耐性を示す細菌を遺伝子操作によって産みだし、結果を検討する」ことが行われた。抗生物質は微生物によってつくられ、他の生物や細胞の生育または機能を阻止する物質であり、医療以外にも畜産や水産にも多く使用されるため、耐性を示す細菌が生じ、その感染症が問題になっている。 ここでは、大腸菌をコンピテントセルとして、プラスミドDNAに抗生物質耐性遺伝子ベクターを導入して、PCR法によって増殖。プレート上で培養して、コロニーの結果を観察するというものである。生徒達は、見るもの、聞くものが全て初体験であり、指導のまま黙々とこなしていた。この段階では、情報量が多すぎて未消化であり、本当に疲れた表情を見せていた。 夕食を兼ねての懇親会が開かれ、研究者達との歓談の中で、おそるおそるかいま見ることのできた遺伝子操作について、興味深そうに話に聞き入っていた。
<3日目:11月24日(月・振替休日)>実験のまとめ 自分たちで育種した抗生物質に耐性を持つ(薬剤耐性)、新たな大腸菌の培養地での結果を発表し、その結果について「思弁」、「類推」と「実証」、「帰納」のやり方を具体的な形で行う手法にTERCのすばらしさを実感した。同じ結果が得られたとき、または異なる結果が得られたときにそれぞれの操作方法について、その原因は何だったのか、またその結果は果たして正しいといえるだろうかなど具体的に考え討議していくことの大切さをよく講義してもらえた。現在の学校での講義、実験の後のこの過程の経験のない生徒達には新鮮であったろう。本当の意味での「探求活動」とはどういうものであるかを実感したに違いない。ただ、この場面では、そのほかの時には活発であったものも、なかなか自分の意見が発表できないことから、この部分にこそ日本の教育に欠け、せっかくのすばらしい人材を育成していく上でのつまずきを感じた。この点を考慮して、このプログラムの作成が行われたことについてもTERCの素晴らしさがあったことに感動した。通り一遍の施設見学と、講義実験だけで終わるのではなく、その結果の報告の仕方。全員での結果や内容の検討などよい締めくくりの内容であった。こういうプログラムこそが、サイエンスキャンプにふさわしいと思われる。 最後の修了式の前には、実験中に撮影した細胞などの写真をTシャツにプリントしてもらい、よい記念となった。今回の別会場プログラムのほとんどは、大学の研究室であった。この産業技術総合研究所が唯一の公的研究機関であり、最先端技術の実際が研究員の人柄と姿勢から、生徒達にはまたとないすばらしい体験となったことと思う。今後とも本研究所には、多くの高校生達を紹介してやりたいものである。