<1日目:11月22日(土)>
足利工業大学総合研究センターでのウインター・サイエンスキャンプは、全国から集まった22名の高校生たちの大きな期待で始まりました。「今なぜ自然エネルギーか?」産業革命以降、化石燃料の大量消費で大気中には温暖化ガスが増大したため、気温の上昇による異常気象で甚大な被害が増えています。急速に進行しつつある地球温暖化の速やかな抑制として自然を壊さず環境負荷の小さな、地球にやさしい自然エネルギーの導入拡大を基本理念として、センター長の牛山泉先生より地球環境問題と風力発電の原理について、中條祐一先生より太陽光を利用したソーラークッカーについて、根本泰行先生よりバイオマス・エネルギーについて個別講義がありました。
次に、屋外の「風と光の広場」に移動し、出力300kWの大型風力発電機用の長さ13mの風車ブレードや各種風車を見学しました。幸い風に恵まれプロペラ型、サボニウス型、ダリウス型、アメリカ多翼型、オランダ型など多くの風車が気持ちよく回転し、それらの各種風力発電機と太陽光発電機を組み合わせたハイブリッドシステムを興味深く観察することができました。さらに、博物館の中では1階に各種小型風車の実機や模型、関連資料などが所狭しと展示され、ここでも高校生たちはデジタルカメラでの撮影に夢中でした。2階では世界各地で実用されているものから、卒業研究で製作した作品まで多数の各種ソーラークッカーが展示され、その鏡面の反射光で部屋中眩しくとても感動的でした。
総合研究センターに戻り、いよいよソーラークッカーの製作にとりかかりました。発展途上国で使用されることも考慮して簡単な素材で軽便で熱効率の良いものを作ることを目標に材料と工具が準備されていました。太陽光を調理する場所にたくさん集めて、エネルギー密度を高くしその熱を逃がさないようにする工夫が必要との説明がありました。その構造によりコストや作り易さを重視した「パネル型」、蓄熱を重視する「熱箱型」、また集光を重視した「反射集光型」は軸対象パラボラとオフアキシスパラボラの2タイプ、全部で4種類のいずれかを2人で1台製作することになりました。ダンボール紙の寸法の割り出しや切り込み作業など、この日初対面の高校生2人の協働作業が始まり、お互い知恵を出し合い、工夫を凝らして取り組んでいる姿にとても好感がもてました。解らなくなったときタイミング良く大学の研究者や学生の皆さんがアドバイスしてくださったことでとても和気藹々とした楽しい雰囲気となりました。接着作業の半ばで予定時間が過ぎたので中断し、懇親会の夕食となりました。懇親会は大学のスタッフの皆さんと親しく懇談、また人柄にふれあい、高校生たちの進路意識の形成に大きく寄与したと思われます。
宿に到着後、ミーティングでの司会進行役は高校生の中から選ばれ、参加者全員の自己紹介と学校紹介やクラブ活動の状況、趣味などの交歓があり仲間意識が芽生えました。目的意識の明確な彼等なので大変立派なミーティングであり、安心して参観できました。
<2日目:1月23日(日)>
中断したソーラークッカーの製作に取りかかり前日以上に熱中し、それぞれ個性的な作品が出来上がりました。この日は冬の日差しが時々射し込む程度で天候状態としては良くありませんでしたが、高校生たちが製作したソーラークッカーで加熱したご飯、芋、パンケーキ、カレーなど各種料理を参加者全員で互いに味見し合い、その美味しさに満足の笑みを湛えていました。
午後からは2枚翼のプロペラ型小型風力発電機の製作でした。まず、プロペラの図面をたよりにバルサ材の切削、小型ナイフの使いまわしに慣れない者も何人かいましたが、スタッフの皆さんのご指導で風を捉えるプロペラ曲面が出来上がりました。紙ヤスリで仕上げた後、好みの模様で塗装しました。
宿に戻り、2回目のミーティング、お互いの気心も知れとても和やかな集いで、お世話になった総合研究センターの皆さんにキャンプの感想や感謝の気持ちを寄せ書きしました。
<3日目:11月24日(月・振替休日)>
いよいよ小型風力発電機の製作、あらかじめ部品や材料が準備されてありましたので、組み立て作業は比較的容易でした。一晩乾燥させたプロペラを取り付け、回転状態を確認したあと全作品の発電性能コンテストが風洞実験棟で行われました。風速6m/sにおける出力測定を実施、それぞれの作品の出来栄えに歓声が沸きおこりました。
会場片付け清掃のあとの修了式で、審査委員長の牛山先生から最高発電出力0.6ワットの作品とプロペラの芸術性の優秀な作品に表彰がありました。また、参加者全員にキャンプの修了証が手渡され、物づくりの楽しさ研究心の大切さを充分体験できたようです。きめ細かく入念に準備された総合研究センターの皆様に深くお礼を申し上げます。牛山先生をはじめ多くのスタッフとふれあえ大変楽しいサイエンスキャンプでした。