『せつめい』や『ワンポイント』のページでは、いろいろな観察方法や原理を紹介しています。
実際に偏光板を使って観察してみると、光の不思議な性質にいくどとなく出会います。その時大切なことは、疑問に思ったことをよく考えること。そして自分の力で解き明かそうと努力することです。
そのため、『せつめい』のページでは、現象をすべて説明するのではなく解明のヒントを載せたものも多くあります。みなさんもなぞ解きにチャレンジしてください。
プラスチック製品の着色について
偏光板を用いると、製造時のようすが理解できるプラスチック製品を1つ紹介します。
それが右写真にある、分度器です。この写真からは、分度器の型に右端からとけたプラスチックが注入され、プラスチックは下の直線部と上の半円部に分かれてつめられていき、最後に左やや上の割れたように見える部分で充填(じゅうてん)が完了したことがわかります。
プラスチック製品を偏光板で観察すると、きれいに着色するものから、ほとんど着色しないものまでさまざまです。その中でも、テープ類やシート類は均一に、フォークのように複雑な形をしたものは縞模様のように着色する場合が多いことがわかります。
また、ゴミ袋を引き伸ばしたときの着色の様子を調べると、均一に伸びたところが均一に着色していることがわかります。このことから、テープ類やシート類は工場でほぼ均一に延伸されて(引き伸ばされて)作られていることがわかります。さらに偏光板で調べると、テープ類や包装の袋などは、延伸した向きのまま製品化されていることも確かめられます。
着色現象について
1.着色する理由
着色は2枚の偏光板と、その間に入れる特別な性質をもつ物体により起こります。
2枚の偏光板のうち、下の偏光板(照明台に近い方)は偏光子ともよばれ、照明台を出る光の振動方向をそろえる働きをします。
振動方向がそろった光は、照明台の上に置いた物体を透過します。このとき着色が起きるかどうかは、物体が複屈折性(ふくくっせつせい)を持つか否かで決まります(複屈折性の大きさにも左右されます)。複屈折性を持つ物質内では、向きにより屈折率が異なっています。このため、光は物体内部を常光線と異常光線の2つに分かれて進むことになります。常光線と異常光線は、互いに振動面が直交しているため、影響し合うことはありません。
物質内で2つに分かれた光は、上の偏光板(観察材料の上に乗せる方)を通過します。この偏光板は検光子ともよばれ、物体を透過した光から、検光子の向きの振動成分を取り出します。検光子を通すと、常光線・異常光線から検光子の向きの振動成分を取り出されるため、本来影響し合わない両光線の成分が重ね合わされます。これにより、着色が起こります。
※ 屈折率は、光の速度や波長に直接関係します。そのため、複屈折性により生じる常光線と異常光線とでは、各波長で位相(いそう)にズレが生じているんだよ。検光子で両光線の成分を重ね合わせたとき、着色するのはこのためなんだ! ※ 初めに偏光子で物体に当たる光の振動方向をそろえておかないと、検光子で成分を取り出す意味がなくなっちゃうよ。 ※ 着色理由の説明は、楕円偏光(だえんへんこう)という考え方を用いても行えるんだよ。 |
2.複屈折性
向きによる屈折率の違いが特に大きいのが、方解石です。方解石内部では、光が常光線と異常光線の2つに分かれて進みます。光が2つに分かれることは、写真のように方解石を通して文字などを見ると二重に見えることから確認できます。また、常光線と異常光線の振動面が直交していることは、二重に見えている文字を偏光板の向きを90°変えながら観察することで確認できます。
方解石の結晶を、紙よりも薄いプレパラートにして偏光板観察すると、二重には見えないかわりに着色現象が現れます。常光線と異常光線が影響し合える厚さになるからです。写真は晶質石灰岩のプレパラートを10倍のルーペで観察したものです。晶質石灰岩は、小さな方解石の結晶が集まってできています。ルーペで見える着色した結晶の一つ一つが方解石で、複屈折性が物体の厚みにより、二重像や着色という形で観察されることがわかります。
3.照明台を見下ろす角度による、色の変化について
照明台で観察するときに気をつけてほしいのは、「光源が広がりをもつ」ということだよ。 つまり、みんなが見ている観察材料の各部分を通る光は、ちがった場所から発せられた光であって、同じ角度で観察材料を透過した光ではないんだ! |
見る角度を上下することによる色の変化は、上のメモの理由の他、見かけ上の観察材料の厚さが変わることが主な原因です。たとえばセロテープを真上から見るのと、斜め30゜で見下ろすのを比べると、斜めから見た厚みは2倍になります。だからといって、真上から2枚重ねのテープを見た色と、斜め30゜で1枚のテープを見た色は同じにはなりません。
4.見る位置を左右に変えたり、観察材料を回すことによる色の変化について
下の5番と同様の理由です。
5.偏光板を回すことによる、色の変化について
偏光板(検光子)の向きを変えると色が変化するのは、取り出す常光線・異常光線の成分が変わるからです。
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