補色と輝きの観察
1.補色の観察
観察中に偏光板を90゜回すと、補色が見られます。補色とは反対の色のことで、補色である2色の光を混ぜると、白色光になります。
写真は、平行および直角に置いた2枚の偏光板の間に、セロテープを貼ったスライドグラスを並べたものです(3列×5行)。
左右を比べると、補色が見えていることがわかります(各列には異なる会社のセロテープを、上から1・2・3・4・5枚重ねにして並べてあります)。
2.補色が見える理由
横向きに置いた偏光板(検光子)は、セロテープを透過した常光線・異常光線の横向き成分を取り出します。偏光板を縦向きにすると、両光線の縦向き成分が取り出されます。このとき偏光板による吸収を無視すると、横成分+縦成分=照明光が成り立ちます。この式は、横成分と縦成分が、照明光の補色の関係になっていることを表しています。
補色が見られることは、肉眼で見るだけでなく、CDやホログラムシート等を用いてスペクトル観察をすると、よりはっきりとわかります。スペクトルの観察には、スリットを用いることが重要です。写真は、本箱にカッターナイフの刃で作ったスリットつけて撮影したプラスチックシートのスペクトルで、偏光板を90゜回転すると補色なることが確認できます。(スリット下半分の白色光は、光源自体のスペクトルを知るためのものです)
3.輝きの観察
着色現象では、色だけでなく、輝きも変化します。写真は包装用のプラスチック袋から切り取った短冊を、向きを変えて並べたものです。短冊の輝きは、斜めに置くほど増し、45゜で最大となることがわかります。輝きは写真ではわかりにくいので、ぜひみなさん自身が実験をして確かめて下さい。
プラスチックの短冊を、偏光板の向きからゆっくりと45゜まで傾けていきます。短冊はだんだんと輝きを増し、45゜付近では光源より明るいと錯覚するほど神秘的に輝きます。
4.輝きが増す理由
包装用のプラスチック袋は、延伸した向きのまま製品化されています。そのため、ふつうに切り取れば、長い辺または短い辺の向きが、延伸した向きになります。この短冊を光が透過すると、常光線と異常光線の振動の向きは、長辺または短辺の向きに一致することになります。
このような短冊を偏光板の間に入れ、偏光板との角度を変化させるとどうなるでしょうか。あとはみなさんで考えてください。
その他の観察素材
1.ルーペを用いた観察
ルーペを用いると、偏光板観察の世界が広がります。ルーペは、小さな世界をダイナミックに見せてくれるからです。使用するルーペは、虫めがねや10倍程度のもので十分です。
おすすめの観察素材は、岩石プレパラートと有機物などのうすい結晶です。岩石プレパラートは、学校の先生に見せてもらってください。有機物などのうすい結晶は、ガラスに水溶液を少したらして蒸発させると簡単に観察できます。クエン酸や酒石酸・ビタミン(薬局で売っています)・砂糖・味の素など、いろいろな物質を観察してください。
このほか、氷の結晶や微生物、糖の水溶液なども偏光板観察に適しています。
なお、着色が見られるのは複屈折性を持つ物質です。したがって、等方な結晶である食塩などでは着色は見られません。また、結晶を写真に撮るには、ルーペの上にガラスを置いて、その上にカメラ固定して(置いて)撮影するときれいに撮れます。右の写真も、10倍のルーペの上にガラスを置き(ルーペと少し間をあける方がよい)、デジタルカメラで撮影したものです。
2.鏡を用いた観察
鏡を用いて偏光板観察すると、鏡に映った観察材料の色と、直接見た観察材料の色が異なるという、おもしろい実験ができます。観察材料にプラスチックシートを用いる、2通りの観察方法を紹介します。
1つは、観察材料をはさんだ偏光板の上に、鏡を置く方法です。もう1つは、観察材料の上に鏡を置き、その上に偏光板(検光子)を置く方法です(検光子は手で持つとよいでしょう)。どちらの方法も、鏡の角度を変えると、鏡に映ったシートの色が変わります。
よく似ている2つの方法ですが、鏡に映ったシートが色づくしくみは異なります。偏光板の上に鏡を置く方法の色づくしくみは、そんなに難しくありませんので自分で考えてください(ヒントは、光をさかのぼることです)。鏡の上に偏光板を置く方法の色づくしくみは、前者の理由に加えて、鏡の反射により光の振動状態が変化することが原因となっています。鏡の反射で光の振動状態が変化することは、鏡に映った偏光板の色を観察することで確認できます。
3.力の観察
偏光板を用いると、力を見ることができます。写真は特殊なポリウレタンを上から押さえて偏光板で見たもので、色づいた模様から力の加わり方がわかるそうです。このポリウレタンは、和歌山大学システム工学部の先生のご厚意により使用させてもらいました。
身近な物質では、ゴミ袋の切れ端を偏光板の間で引き伸ばすことにより、加えた力を見ることができます。ゴミ袋は引き伸ばすと元に戻りませんが、力を除くと元に戻る物質もあります。透明なゴムホースの切れ端(ホームセンターで切り売りしています)などが観察に適しています。

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