1.偏光板について
偏光板は、PVA(ポリビニルアルコール、細長い分子)などのプラスチックを延伸して分子の向きをそろえヨウ素を結合させたもので、細かなPVAスリットの集合体です。偏光板に光が入射すると、この細かなスリットに垂直な振動成分(電場の振動成分)だけがスリットを透過するので、光の振動方向がそろいます。
2.偏光板が通す振動方向の調べ方
偏光板は光の振動方向をそろえます。この振動方向を知っておくと、偏光板で観察した時に、現象を詳しく分析することができます。偏光板が通す振動方向を調べる方法を1つ紹介します。
外の景色が映っているガラス窓をさがし、偏光板を通して映った景色をながめます。写真のように偏光板の持ち方で、窓に映った景色がそのまま見えたり、景色が見えなくなり窓の奥にある部屋の内部が見えたりします。
窓に映った景色がそのまま見える偏光板は、縦方向の振動を通しています。この偏光板には、振動方向を表す縦向きの矢印をシール等で貼りつけてください。
窓ガラスに映った景色で偏光板の向きがわかるのは、映った景色自体が偏光しているからです。
これは、右のグラフのようにガラス面での反射率が、光の振動方向により異なるため生じます。
3.偏光板を用いない観察法
上のグラフからわかるように、ガラスで反射した光は部分的に偏光(partially polarized)します。反射光が偏光するということは、透過光も偏光することを意味します。 入射光−反射光=透過光が成り立つからです(吸収は無視します)。つまり、ガラスは偏光板の働きをします。着色現象の観察には、偏光板が2枚必要でした。ガラスは2枚目の偏光板(検光子)代わりとして、手に持って観察して下さい(ガラスを傾けていくと、着色が濃くなります。最適な角度を考えてください。ただし一ひねりが必要です)。1枚目の偏光板代わりにおすすめなのは、液晶画面です。携帯電話・パソコン・ワープロ・液晶テレビの画面の上に観察素材を置き、ガラスで観察してください。なお、ガラスは数枚重ねにするほど効果が高まります。
4.身の回りの偏光現象
写真1は、窓ぎわの机上に置いたカセットケースで、写真2はガラス窓に影が映るように置いたカセットケースです。偏光板は用いませんが、着色が見られます。
よく見ると、色づいている場所に共通点があることがわかります。透過または反射を2回以上している場所です。
両方の写真とも、左上奥から光が来ています。写真1の立てたケースで考えると、光は前面を透過し、後面で反射され、前面を透過して私たちの目に入ります。透過・反射の都度、光は偏光するので、透過・反射が偏光板の役割をしていることになります。
また、観察用に照明台を作ったとすれば、照明台からの光もある程度偏光しています。まず、光源のガラス管を通るとき偏光し、ガラス台を通るときにも偏光します(ただし、すりガラスを用いると、偏光は解消されます)。さらに光が観察材料を透過するときにも偏光します。このため、照明台に偏光板を1枚置いただけで、観察材料はある程度着色します。この着色は、斜めから観察するときよく見られます。
青空も偏光しています。太陽光線が上空で、気体分子などにより散乱されるとき、部分的な偏光が起こるからです。偏光の度合いは、太陽の近くでは小さく、太陽から90°の位置で最大となります。
写真3は空を背景にして、カセットケースを、偏光板を1枚だけ用いて撮ったものです。太陽に近い空(写真3左)では着色は見られませんが、離れると(写真3右)着色が見られます。これは青空が偏光板の働きをしているためです。2枚の写真は同じ日の同じ時間帯に撮ったものです。太陽付近の空からは光があまり散乱されずに届くので、空の色は青くありません。
部屋の中でカセットケース等の着色現象を見る場合は、 太陽から離れた青空からの光が入り込む窓の近くで観察するか、 直射日光が部屋の中で反射した反射光を利用するといいんだよ。 |
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