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国立環境研究所でキャンプ(北海道)

 国立環境研究所では、近年社会的な関心が急速に高まっている地球環境問題、特に「地球温暖化」をテーマに据え、二酸化炭素などの目には見えない「温室効果ガス」を、当研究所の特徴を生かした観測体験や実験を通じて、実際に感じとってもらうキャンプを開催しました。キャンプは8月20日から22日の三日間にわたり、北海道根室市の地球環境モニタリングステーション―落石岬において、埼玉、神奈川、大阪、兵庫、佐賀の各府県から集まった六名の高校生の参加を得て行いました。
 
1日目(8月20日)
 まずキャンプの導入として、釧路空港から根室に向かう途中、浜中町の霧多布湿原センターに立ち寄りました。雄大な景色を前に、地球温暖化と湿原の関連について学んだのち、館長さんより「自然から学ぶ」ことの大切さについてお話をしてもらいました。その後、日もすっかり暮れて宿舎に到着しました。夕食後、研究所が行っている地球環境モニタリングや落石岬ステーションでの観測について学びました。
 
2日目(8月21日)
 今日はいよいよ落石岬ステーションで実習です。車を降りて湿原を徒歩でいくこと30分、ステーションに到着です。ステーションでは、実際の観測機器をひとつひとつ見ながら地球温暖化を観測する仕組みについて学びました。そのあと、野外でササやミミコウモリといった野草を使って植物の光合成能力を測定する実験を行いました。二人一組で実験開始です。選んだ葉の付け根を熱処理し、何枚かの葉にはアルミホイールをかぶせます。そして一定時間葉っぱに光合成と呼吸をしてもらったのち、単位面積当たりの重さを計りました。さて、結果は、光合成で葉は重くなり、アルミで包んだ葉は呼吸した分軽くなるという、見事な成果が得られました。葉っぱの面積を計るのに、アルミホイールに葉の形を写し取り、それを切り取って重さを量るという手作業で行いましたが、普段なかなか体験できない作業に皆大奮闘しました。また、特殊な溶液が葉に浸み込む様子から気孔の開き具合を計る実験も行いました。
 実習の合間に、落石湿原の植物観察も行いました。落石湿原は霧と深い関わりがある湿原で、地球温暖化でもし海流が変化すると霧の発生に影響を与え、ひいては湿原植物にも影響するかもしれない、といったことも学びました。
 宿舎に戻り、海の幸でお腹を満たし、夜は都市ではなかなか見られない天の川観察に出かけました。星空を見ながら改めて地球を感じとったイメージを胸に、宿舎で今度は地球温暖化問題についての勉強です。なぜ温暖化するのか、私たちに何ができるのか、ひとつひとつ自分に問いかけながら皆熱心に聞き入りました。
 
3日目(8月22日)
 最終日、再びステーションに出かけ、温室効果ガスの観測体験をしてもらいました。観測体験では、標準ガスという物差しとなるガスの濃度をもとに、実際に観測された温室効果ガスの濃度をグラフ上に描きながら求めてみました。これを自動で精度よく行っているのがこの観測ステーションであることを、作業を通じて皆に実感してもらいました。そして修了式です。一人ひとりに、国立環境研究所理事長からの修了証を交付し、キャンプを通じて感じた思いを語ってもらい、落石岬を後にしました。
 釧路空港に向かう途中、キャンプの締めくくりとして、湿地を守る「ラムサール条約」の登録地である厚岸町の別寒辺牛湿原と、日本最大の釧路湿原を訪ね、自然を守ることについても学びました。
 初めての北海道、あるいは初めての一人旅で、北海道の雄大な自然を全身で感じながら、地球を見つめる目と環境問題を思う感性を、このキャンプを通じて存分に培ってもらうことができたのではないでしょうか。加えて、全く知らない高校生達が、短いながらも三日間にわたり寝食を共にし、お互い良い友達となったことも、このキャンプの大きな成果のひとつと言えるのではないでしょうか。
 出典「国立環境研究所 地球環境研究センターホームページ」

 

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