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通信総合研究所本所でキャンプ(東京)

 秋田、宮城、千葉、静岡、京都、兵庫、佐賀、宮崎など日本各地から男子4名・女子8名の高校生が参加した今年のサイエンスキャンプは、独立行政法人 通信総合研究所として発足後、初の開催でした。8月7日、キャンプ第一日目は高校生各人の科学的興味・関心や参加理由などを自己紹介したオリエンテーション、共同実験「フーコーの振り子」から始まりました。研究所を訪れたばかりの高校生のみなさんの視線を集めていたのが、本所ロビー17メートルの高さから吊された重量22キログラムの振り子です。そこで歴史的背景や基礎原理のレクチャーに始まり、地球上の緯度や回転速度の測定法などを学びました。その後、三つのコースに分かれて三日間の体験学習がスタートしました。
 高校生全員がインターネット経験者であるAコース「次世代インターネットを体験しよう」のテーマは、社会的注目度も高い次世代インターネットです。二日目には、北陸先端科学技術大学院大学と研究開発用超高速ネットワーク「JGN」で結び、遠隔テレビ会議が行われました。そして午後はネットワークケーブル製作に挑戦しました。次世代インターネット「IPv6」を活用しコマンド入力や音声・画像の送受信を体験し、その高性能に驚きが隠せないようでした。最終日は、三次元仮想空間を共有する「ネットユニバース」システムなど、実用化に向けて研究中のさまざまな施設を体験を交えて見学しました。
 次に全員が女子高生というBコース「レーザーによる原子の周波数測定」は、各種単位の根元を成す古典力学など、大学のゼミさながらの基礎講義で幕を開けました。二日目は実験が主体です。セシウム・セルが封じ込められたガラス器にレーザー光を照射して波長と強度を調べる実験では、半透明ミラーの調整によるレーザーの誘導と分岐、変化させた周波数の計測に苦労があったようですが、研究員の細やかなサポートのもと、見事実験を成功させました。実験の合間には、世界有数の原子時計を備えた正確な日本標準時を司る施設を見学しました。
 基本講義を活かして実習するというプロセスで、二つのテーマに取り組んだのがCコース「超伝導センサーによる脳磁界計測とマイクロ波通信技術の体験」です。「マイクロ波〜」では、初日に作製した「マイクロ波平面アンテナ」を使い、最終日に送受信実験を行いました。一方「脳磁界計測」では、二日目、脳の多様な働きを学んだ後、研究助手の大学生を被験者に、超伝導体磁気シールドが環境磁気雑音の遮断を可能にしたCRL開発の脳磁界計測装置「SQUID」を使って脳の神経活動を観察しました。多岐に及ぶ質疑応答が活発に交わされました。また相応の装備を一人一人整え、クリーンルームも見学しました。
 初日の夕刻には、高校生と研究員の懇親会としてバーベキュー大会が行われましたが、あいにく雨模様の天候のため、研究所食堂に着席しての食事会形式になりました。それでも外の鉄板から香ばしい匂い立ち上る度、食欲も会話も弾んでいきます。食後、改めて趣味やご当地自慢を含めた自己紹介が行われると、ユーモラスな感想や研究所スタッフからの質問も飛び出し、緊張気味だった高校生同士と研究員との親交を文字通り深めた懇親会となりました。
 そして最終日午後、キャンプのまとめとして、担当研究員なども含めた全員の前で、実験結果の検討・発表会とサイエンスキャンプ修了証の交付が行われました。OHPやデジタルカメラの映像を活用した発表は一グループのみで、口頭の発表が中心でしたが、各グループとも全員の力を合わせて、講義の総括と実践研究の成果を披露しました。研究員から理解度に対する核心をついた厳しい質問が飛ぶ場面もありましたが、修了証が交付されると、高校生の表情には三日間という短期間ながら全力で取り組んだ安堵感と充実感が浮かんでいました。
 高校生達は、「まだ研究段階の先端技術や機器に触れられて楽しかった。」、「研究者から、研究に対する考え方や苦労などの体験談が聞けて良かった。」、「随時、疑問に思ったことを質問できたのが良かった。」、「科学が日常生活のさまざまな面で役立っていることを感じた。」、「科学は、いろいろな分野が総合している学問なのだと実感した。」、「同じ分野に興味を持ってる人と出会えて、いい刺激になった。」、「学んだことを将来に役立てていきたいと思った。」と語っていました。
 学校教科の習得していない単元や専門性の高い論文内容が盛り込まれた講義では、かなり理解に苦労していましたが、実験に挑戦し、質問を重ねながら科学理論や数式との整合性をつかみ理解を深めていくという体験学習の効能を、私たち通信総合研究所の研究員も、目の当たりにしました。また高校生へのパソコン、携帯電話、デジタルカメラなどの普及率も高く、彼らの科学的好奇心が生活に密着した地点から出発していることも実感しました。
 出典「CRL NEWS No.306 サイエンスキャンプ2001」

 

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