物質・材料研究機構でキャンプ(つくば)
岩手、山形、茨城、埼玉、千葉、東京、神奈川、沖縄の各都県から15名の高校生が参加した今年のサイエンスキャンプは、独立行政法人物質・材料研究機構の発足に伴い、これまで無機材質研究所と金属材料技術研究所の両研究所が独自に行ってきた内容をミックスして三日間で消化できるように企画したプログラムで7月31日から8月2日まで開催しました。今年の参加者も昨年と同様に非常に意識の高い高校生が多く、積極的に研究者に質問を浴びせていました。
1日目(7月31日)
会議室で、歓迎の挨拶が行われ、引き続き参加した高校生、指導を担当する研究員の自己紹介を行い、旧無機材質研究所の紹介ビデオで少しテンションを高め、メニューのアウトラインの紹介が行われました。
初日のセラミックスに関する実験は、ダイヤモンドの作製に取り組んだ8名のダイヤモンド班と、光るガラスの作製に取り組んだ7名のガラス班に分けて行われました。ダイヤモンド班では、実験前にまず炭もダイヤモンドも成分が炭素なのにどうして性質が異なるのかを学び、ダイヤモンドの合成方法である高圧法の原理と合成法についてレクチャーを受け、高圧をかけてできあがったダイヤモンドをSEM(走査型電子顕微鏡)で観察しました。
一方、ガラス班では、テルルガラスの作製に向けて各自計算して求めた微量の第三元素を含めた三種類の粉末を化学天秤で秤量し、乳鉢で十分混合してるつぼに移し、800℃で溶解して各々カラフルなガラスを作製しました。赤外線や紫外線に透かして誰の作ったガラスが光るのかを観察し、最後にできあがったガラスを割って班の7人で分け合い標本を作製しました。
2日目(8月1日)
会議室で構造材料についてのレクチャーを受け、旧金属材料技術研究所の紹介ビデオで少しテンションを上げておき、午前中の実験では、前日のダイヤモンド班は室温引張試験に、そしてガラス班はシャルピー衝撃試験にとりかかりました。いずれもステンレス鋼二種類の材料判定を目的としたものです。引張試験班は、引張試験片の試験前の平行部と直径を測長機で測定し、引張試験機で破断試験を行いチャートから引張強さ、破断試験片の突き合わせから破断伸びと絞りを求め、精密カッターでSEM観察試料の切断までを行いました。シャルピー試験班は、まず室温でシャルピー衝撃試験のやり方に慣れてから、氷水、マイナス50℃近傍と液体窒素温度のそれぞれの温度における二合金の衝撃吸収エネルギーを求めました。各破断試験片を実体顕微鏡で観察撮影し、代表的な破面を選び、精密カッターでSEM観察用に切断しました。午後は引張試験班とシャルピー試験班がチェンジして引き続き材料試験を行った後、SEMの装置説明を受け、各自実際に装置を操作して破面観察と撮影を行いました。
実習終了後には高校生同士と研究所スタッフの親睦を深めるため、組織制御実験棟で、れんがに型を彫って純スズを流し込みメダルを作るピュータークラフトに挑戦してもらいました。高校生達は、プログラム実習とは違い、和やかな雰囲気で思い思いのメダル作りに挑戦していました。

3日目(8月2日)
二日目までに行った実験データを5台のパソコンを使ってチームごとにまとめ、レポートの作成と発表の準備に取りかかりました。材料試験の結果を持って図書室に行きハンドブックや便覧を駆使して二種類の合金を判定しました。午後からは一人ずつ実験と感想を2〜3分で発表してもらいました。発表内容は、初日のダイヤ作製、光るガラス作製、そして二日目の材料試験結果からの合金の判定と高校生達がバラエティーに富んださまざまな発表を行いました。発表の途中で理事長から挨拶があり、続いて修了証が一人ずつ授与されました。高校生達は別れを惜しみつつも充実感いっぱいで研究所を後にしました。
今回参加した高校生達にとって、三日間の体験実習や講師の研究員との意見交換を通じ、少しでも科学技術に興味を持ち、将来の進路選択の一助となればと思います。また、研究所スタッフにとっても、日頃自分たちの研究に追われる毎日ですが、若い芽を育てるという機会に恵まれたことで充実感を味わえました。
出典「NIMS NOW Vol.1 No.6 サイエンスキャンプ2001」
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