「理科離れ」といわれてから、いろいろなところで科学イベントがおこなわれ、科学の啓蒙書や実験書などが発行され、誰でもが科学の楽しさを身近に味わえるようになりました。大変素晴らしいことだと思います。しかし、日本の将来を考えたとき、科学技術のリーダーとなるような人を育てるためにはまだ十分とはいえません。そこで、サイエンスキャンプの果たす役割はとても大きいものだと思います。高校生や高専の生徒は、日本の最先端の科学技術を研究している施設で、夏休みの一定期間を利用し、直接ふれながら勉強ができるのです。
私は、これまで航空宇宙技術研究所、日本原子力研究所、電子総合研究所(現在の産業技術総合研究所)、核燃料サイクル開発機構の4つの研究機関にアドバイザーとして参加しましたが、どこの研究機関も素晴らしいプログラムでした。
航空宇宙技術研究所では、航空技術の最先端や航空技術の安全性などを学習することができました。公開見学会では見ることのできないさまざまな研究施設の見学、そしてフライトシミュレータによる航空機の操縦体験など貴重な体験をしました。HOPE(日本版スペースシャトル)の設計図を貰ったり、研究者とメールのアドレスを交換している生徒もいました。
日本原子力研究所では、専門的な講義はもとより、霧箱を製作し放射線を観察したり、核融合研究施設の見学や学習、巨大マジックハンドのような装置のマニピュレータを操作体験するなどさまざまな実習を行いました。最終日の、研究発表のために各班とも、2日目の夜は遅くまでプレゼンテーションの準備をしていたのがとても印象に残っています。
電子総合研究所では、スターリングエンジン、超伝導体物質、太陽電池、コンピュータの4つのコースに分かれ、一つのテーマを3日間しっかりと学習し、製作実習を行いました。どのコースも研究員の方々はとても熱心に指導してくれました。マンツーマンのような指導で、高校生の疑問にも丁寧に説明し解決してくれました。全員が研究員になったような気持ちで取り組んだようです。
核燃料サイクル開発機構では、ナトリウムのダイナミックな実験からはじまり、原子炉常陽の見学と訓練用操作パネル操作、液体の流れをコンピュータで計算、マニピュレータ操作、電子顕微鏡観察などおこないました。原子炉の構造や安全性について学習することができました。
各研究所とも、その特長を生かし、キャンプ参加者の高校生のためだけに施設を解放し、特別なテキストを作成し、実験プログラムを組み、講義をしてくれるのです。このような、質の高い最先端の科学技術を体験することができ、研究者や技術者より直接講義を受けることができるのはサイエンスキャンプしかないと思います。また、3日間同じ目的で全国から集まった高校生同士の交流も大変価値のあるものだと思います。
高校生の中には、「最先端の科学や技術に興味や関心がある」「自分はこんな研究をしたい」など科学に関しての意欲をもつ人がいるはずです。是非、サイエンスキャンプに参加をして欲しいのです。そして、貴重な経験を通して視野を広げ、将来の展望を抱き、日本をリードするような科学者になって欲しいと願っています。
千葉県立市川工業高等学校教諭 大嶋一夫
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