夢はジェットエンジンの研究
私の将来の夢はスクラムジェットエンジンの研究者になることです。しかし、ロケットなどと比べるとどうしても地味なせいか、調べてみても情報自体が少ない上断片的で、色々疑問があっても答えを見つける方法すらわからず、寂しい思いをしていました。
そんな時、サイエンスキャンプの募集記事を新聞で見つけました。それまでは航空宇宙技術研究所(NAL)というものがあることすら知らなかったのですが、内容に興味を引かれ、すぐに参加を申し込んでしまいました。
キャンプ中、特にためになった事が二つあります。一つはジェットエンジンのお話、もう一つは他の参加者との出会いです。
今まで様々な本を読んで、ジェットエンジンについては一通り理解していたつもりでした。しかし、それはそれで消化不良も多かったらしく、話を聞くことで初めて知識の構築がやり直せたように思います。また、懇親会では諸エンジンの長所と開発の難しさとを比較したお話が、私にはできなかった視点からのもので、大変勉強になりました。
私は宮城からの一人旅だった訳ですが、更に遠い所からこのキャンプに参加しに来た人もおり、多くの刺激を受けました。身近に航空関係志望の人など皆無であったため、自分と似た志を持っている参加者の皆との交流は大変楽しく、忘れられない思い出です。普段友人とはできないような、夢についても話せました。
最近、日本の航空宇宙関係のニュースをよく耳にしますが、その度にNALでの三日間を思い出します。私にとって、とても貴重な体験となった三日間です。
宮城県立第一女子高等学校二年生 航空宇宙技術研究所に参加
夢の分野
私がサイエンスキャンプに参加でき、国立医薬品食品衛生研究所で三日間を過ごせたのはとても幸運だったと思います。将来の夢と考えている分野に自分が大きく一歩を踏み出したような思いです。
プログラムの中で一番興味深く思ったのは、二日目の遺伝子治療医薬品についてです。プログラムの内容が判ってからずっと、この講座を楽しみにしていました。変異したり欠損したりした遺伝子の情報を正常に治療して、体内で特定のタンパク質を作って病気を治してしまおうという考え方が、今まで私が考えていた薬のあり方とは全く違います。また、遺伝子導入ベクターにもいくつか種類があり、ウイルスベクターの中には大腸菌をもとに作られているものもあって、そんなものを使って大丈夫かとも思いました。安全性に問題があるというのも、なるほどと納得しました。そして、非ウイルスベクターは本当に細胞内に遺伝子を導入できるのかと疑問に思っていましたが、リポソームを使った実験では、細胞内でGFP遺伝子が発現して緑色になり、自分の目で確認することができました。しかし、遺伝子導入ベクターには、まだ改良しなければならない点があります。また、遺伝子治療は、主に、現在その他の治療法が難しい病気について研究されています。今後さらに、大きく発展していくべき分野に思えました。
もう一つ、私が興味を持ったところは、一般公開の日に行った薬剤反応性遺伝子解析プロジェクトチームです。持っている遺伝子は一人一人違うので、同じ薬を飲んでも出る効果は全然違ってきます。このプロジェクトチームの研究は、遺伝子を解析したデータを見て、その人に合った薬を適量処方し、副作用を抑えながら効果をあげようとするものです。いろいろな薬を試してみて自分に合うものを見つける必要もなくなるそうです。この方法が普及すれば、病気の治療のために飲んだはずの薬が効かなかったり、副作用で他の場所を病んだりすることも減るはずです。今ある薬剤の問題点を大きく改善することになるのではないかと思いました。
その後もたくさんの研究室に行きましたが、変異遺伝部で実際に遺伝子を見ることができたのもとても印象的でした。
私は毒性部の実験動物と科学についての講座も印象に残っています。今まで実験動物に対しては、ただかわいそうとしか思っていなかったけれど、薬剤の研究には動物実験が欠かせないことを実感しました。研究室内にはサリドマイドを投与されたラットやうさぎの骨格がたくさん置いてありました。薬品で赤く染まっている骨はとてもきれいでしたが、頭部や胸部、後足などに異変が出ていて、もとが生き物だったとは思えない姿でした。自分でマウスに皮下注射をしてみて、かぜ薬一つ飲めるのにも、研究者の努力の結果であると同時に、いくつもの命の犠牲のおかげだということを絶対に忘れてはいけないと思います。研究者を目指している自分は憧れだけでなく、このような現実も心に刻んでおくべきだと思います。最初は、この講座はいやだと思っていましたが、あえて見せていただき、本当によかったと思います。
サイエンスキャンプの参加者に選ばれて、高校生の私が国立の大きな研究所に足を踏み入れることができたのは、とても貴重な体験だったと思います。私がしつこく質問しても、研究者の方は嫌な顔もせずに答えて下さいました。仕事中の研究員は生き生きしていて、きっとこれが天職なんだ、ととてもうらやましく思いました。参加者もみんな自分の将来に真剣で、まじめに活動に取り組んでいたのが私にとってよい刺激になったと思います。何年後か分からないけれど、私も白衣を着て、あの生き生きとした表情で、研究室に立っていたいです。
静岡県立浜松北高等学校二年生 国立医薬品食品衛生研究所に参加
人生を決めた三日間
サイエンキャンプの三日間は「驚きと感動の連続」であった。普段の学校生活では、決して体験できない数々の実習を通して、学ぶことの楽しさが分かった。
感動のあまり鳥肌が立ってしまったのは、ウイルスを電子顕微鏡で観察した時だった。生物体で最も小さなウイルスが、数々の病気を引き起こすという事実を、今さらながら不思議に思った。教科書で見るのと、実際にウイルスを目の前にして観察するのとでは、感動の度合いが全く違った。
最も心に残った実習は、牛の診断である。中でも直腸検査は、興味本位で最も楽しみにしていた。しかし、いざやってみると非常に難しい検査であった。研究員の方に誘導されて、ようやく子宮や卵巣の位置を知ることができた。腸の動きや卵巣の柔らかさ、牛の体温の高さを体感したことは、大きな感動となって私の心に強く刻まれた。
今回のサイエンスキャンプで得たものは数多くあるが、その中でも高校生のうちに、このようなたくさんの貴重な体験を積んだことは、自分の大きな財産となるであろう。そして何よりも、獣医という職業についての多くの知識を得たことが大きな力となった。
私にとって、獣医はテレビや本などで見て、なんとなく憧れていた職業であった。しかし、研究所で大勢の獣医の方に話をお聞きして、獣医の仕事内容の幅広さやその重要性を具体的に知ることができた。これこそまさに自分がやりたい仕事だと感じ、「本気で獣医を目指そう」と決意した。このサイエンスキャンプで得た数々の感動を胸に、日々努力していきたい。
栃木県立栃木女子高等学校三年生 農業技術研究機構動物衛生研究所に参加
時計の神様
私は将来、量子力学などに関することを研究する仕事に就きたいと思っている。しかし、よく考えてみると、私はそういった仕事についての知識をあまり持っていなかった。今回このサイエンスキャンプに参加しようと思ったのは、少しでも多くの体験をして、いろいろな事を知りたかったからである。そして私のこの目標は見事に達成できた。
研究所の方たちからは本当にたくさんの事を教えていただいた。研究所で行っていることなどももちろんだが、私が一番勉強になったと思うのは研究に対するその姿勢である。これは直接口で教えてもらったわけではなく、私が三日間を通して感じたことだ。何か目標を持ってそれに一生懸命になり、それでもやはり冷静さは忘れずにあらゆる視点から自分のやろうとすることを見ていく。仲間同士助け合って、時には笑い合って、とてもいい雰囲気だった。私もこんな所で仕事がしたいと思った。
このキャンプでは全国各地の人と友達になれた。みんな自分なりの考えや、夢や目標を持っていて、私にはとても良い刺激になった。
通信総合研究所には日本の標準時を定めるいわば『時計の神様』がある。私がこの神様のもとで学んだものは数限りない。しかし今回の体験で、将来への道が一本に定まったわけではない。むしろ道はさらに増え、さらに複雑になった。だがそれは私にとって、どうすればよいか分からず立ちつくしてしまうようなものではなく、時には迷いもするけれど楽しんで歩いていけそうな道である。
佐賀県立鹿島高等学校一年生 通信総合研究所 本所に参加
感動モノ
楽しいときほど時間が速く流れるように感じるものですが、理化学研究所(以下理研)での三日間は本当にあっという間でした。キャンプ修了から一ヶ月以上たった今でもこの貴重な三日間の体験は私の心に鮮明に残っています。
一番印象的だったのは、研究者の方々の研究に対する情熱です。研究での新発見や成功の裏には長年の地道な努力があることを知りましたが、理研で出会った方々はそんな大変さ、厳しさも含めてとにかく研究が好きだ!というオーラを全身から放っていました。そしてそれを真剣に、ときに笑いも交えながら私に伝えてくださいました。
キャンプに参加する前の私は研究者になりたいとは思うものの、実際の研究の現場がどういうものか分からない不安もあり、その思いはぼんやりとした夢でしかありませんでした。しかしキャンプに参加してその夢がはっきりした目標に変わりました。現在受験生として勉強漬け(ちょっと誇張)の毎日を送っていますが、一日一日が大学やそしてその先にある研究者生活に繋がっているんだと自分に言い聞かせて頑張っています。
プログラム自体もとても充実していました。初めて見る数々の最先端機器を使えたのは感動モノだったし、このキャンプのために作ってくださったテキストも同じくらい感動モノでした。
こうして振り返ってみると、つくづくこの素晴らしいキャンプに参加できて良かったと思います。このキャンプを支えてくださったすべての方に感謝するとともに、一人でも多くの高校生にこの貴重な体験の機会が与えられたらいいなぁと思います。
国立東京学芸大教育学部附属高等学校三年生 理化学研究所に参加
七年後の夢
私の家に参加通知が届いた時、本当に嬉しかったのは言うまでもなかった。サイエンスキャンプには、期待して行くだけの価値は、十分にありすぎる程だった。
今回自分にとって一番の注目すべき事は、やはりと言うか、核融合であった。以前までは原子炉の方に興味がわいていたのだが、暴走の危険性がないこと、燃料が海水からとることができ、廃棄物が少ないこと…と、まるで原発の欠点を狙い撃ちした様な良い事三昧の装置に、引きつけられない訳がなかった。それだけに、世界レベルの試験装置JT-60(これがまたデカイ!)を見られたのだから、もう言い残すことは何もないという気分だった。
そして心に残った事が二つある。一つは最終日にあった「キャンプのまとめ」と称する各々のグループ発表である。同じ事に興味を持ち、それぞれに自分の意見を持つ等身大のみんなの中に浸ることができるのは、めったにない機会だと思えた。今でも全員で三日間を過ごしたことは楽しかったと思っている。
二つ目は那珂研究所の展示館での高橋さんの言葉でした。とにかく「様々な分野からの人材が核融合の実現には必要」と終始強調されていた事には、現代の科学技術の結びつきの強さに心を打たれるものがあった。
核融合は核廃絶に貢献する、という一文を以前見付けたことがあった。これだけ意義のある研究に近い将来自分も携わりたいな、と今回の参加でその思いがさらに強くなった。
秋田県立横手高等学校二年生 日本原子力研究所に参加
運命の出会い
僕は今まで漠然と留学したいと思っていました。日本より米国のほうがレベルが高いと思っていたからです。しかし、今回のサイエンスキャンプで世界観が変わりました。想像以上の実験施設、世界に誇れる研究、活き活きとしている研究者の表情、夢のようでした。
楽しく、分かりやすく「液状化現象」について学べました。手を動かし体験して、なんとなく分かった気がしました。本当に理解するにはもっとたくさんの知識が、それも物理、化学、地学、全ての知識が必要だと知りました。興味だけではダメでした。日本を、世界を支えているのは研究者だと思いました。いつか研究者になりたい!!
全国から来た、同じような夢、興味を持った人との出会いも最高でした。自分で機械を造って研究してる人、独創的な考え方をする人、ノーベル賞を取りたいという人などと三日間を一緒に生活をし、たくさんの刺激を与えてもらいました。そして負けたくないと思いました。
今の目標は大学に入ることです。そして早く研究者の仲間入りがしたいです。将来、研究者になった理由を聞かれたら「サイエンスキャンプに行き、研究のおもしろさを教わり、同じような研究者になりたいと思ったからです」と答えたいです。
素晴らしいチャンスを用意していただき、本当にありがとうございました。一生忘れられない、最高の夏休みです。準備など大変だと思いますが、来年以降も続けて行って欲しいです。
早稲田実業学校高等部三年生 港湾空港技術研究所に参加
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