サマー・サイエンスキャンプ2006

生物の力による環境浄化能力を考えよう 独立行政法人 国立環境研究所

人間は便利で豊かな生活を送るために、多くの有機化学物質を使用し、環境へ排出しています。それらは大気、水や土壌を介して輸送され、植物や土壌細菌によって吸収・分解されます。今回のキャンプでは、化学物質の植物への吸収と微生物相への影響を調べます。具体的には、植物コースでは実験用植物に化学物質を含む水を与えて、その物質が吸収される様子を観察します。微生物コースでは様々な環境から採取した土壌にどのような微生物がいるのかを調べます。実験にはHPLCやDGGEという少しレベルの高い技術を使用しますが、研究者がわかりやすくご説明しますので安心して受講してください。またそれぞれのコースともに、自然を観察するフィールド調査を行います。このキャンプでの経験が環境問題を科学的に理解するための最初のステップになることを期待しつつ、皆様のお越しをお待ちしています。

会期

2006年7月26日(水)午後1時15分〜7月28日(金)午後3時 2泊3日

会場

独立行政法人 国立環境研究所
茨城県つくば市小野川16-2
(「東京駅」から約1時間30分)
URL:http://www.nies.go.jp/
宿泊場所:ホテルニュー鷹(予定)

募集人数

2コースで12名

キャンプの実習内容(予定)

A.「植物(植物と環境浄化能力を考えよう)」コース 6名
現在、人の活動により環境中に様々な有機化学物質が放出されています。それらの多くは環境中で植物や土壌細菌によって吸収・分解されます。本コースでは植物によって有機化学物質が吸収されていく様子を観察します。具体的にはプラスチックの素材として良く使用されているビスフェノールAという化合物を水に溶かし、そこへ植物の根を浸します。ビスフェノールAの濃度を高速液体クロマトグラフ装置(HPLC)で測定し、時間とともにビスフェノールAの濃度が減少して行く様子を観察します。また、私たちヒトを含めた生物はまわりの環境と深い関わりを持って生活しています。生物と環境との関わりを知るためには、その生物をよく知らなくてはなりません。そこでこのコースの後半では、筑波山山頂付近での植物観察を通じて、基本的な観察のテクニックを学びます。生態系の中でそれぞれの植物がどのような役割をしているのかを考えながら、植物の生き様を学ぶトレーニングを行います。

B.「微生物(微生物の多様性を覗いてみよう)」コース 6名
私たちのまわりには、非常にたくさんの微生物(細菌)が生きています。例えば土壌1グラム中には10億匹ほどの土壌細菌が住んでいるといわれています。これらの多様な細菌は、環境中に放出された様々な化学物質の分解に大きな役割を担っています。本コースでは、身近な環境中の微生物の多様性を遺伝子解析により観察します。先ず始めに、公園、街路樹、湖等身近な環境から土壌あるいは水試料を採取します。次に、これらの試料中から微生物由来のDNAを抽出します。そして、多様性を観察するために、特定の微生物遺伝子を遺伝子増幅装置(PCR装置)を使って増幅します。さらに、電気泳動装置(DGGE)で分離して多様な微生物遺伝子によって生じる模様(電気泳動パターン)を観察し、それぞれの環境試料での結果を比較します。少し難しいですが、この方法は日本のみならず世界中の研究室で行われている世界標準技術ですので、頑張って下さい。

スケジュール

第1日目(7月26日(水))
13:15   13:30 開講式/オリエンテーション
13:30   14:00 研究所の概要説明
14:00 15:00 主な研究施設の見学(地球温暖化、循環・廃棄物関係研究施設など)
15:00 15:10 コース分け(事前に決定します)
15:10 17:00 プログラムオリエンテーション
(A.「植物」コースは使用する機器の説明と講義 B.「微生物」コースはフィールド調査)
第2日目(7月27日(木))
A.「植物」コース
9:30 12:00 植物による化学物質吸収実験準備
12:00 13:00 昼食
13:00 16:00 植物による化学物質吸収実験・結果・考察
16:00 17:30 ディスカッションと講義
B.「微生物」コース
9:00 12:00 環境試料からのDNA抽出、遺伝子増幅
12:00 13:00 昼食
13:00 16:00 遺伝子に関する講義
16:00 17:30 電気泳動(DGGE)用試料の調整、泳動開始
A.B.全体
18:00 19:30 研究者との懇親会
第3日目(7月28日(金))
A.「植物」コース:筑波山山頂における植生調査
8:00 9:30 筑波山山頂へ移動(ケーブルカー利用)
9:30 12:00 山頂自然探索路の植生調査
12:00 13:00 昼食
13:00 14:30 研究所へ移動
B.「微生物」コース
9:00 12:00 電気泳動結果の検出及び解析
12:00 13:00 昼食
13:00 14:30 DNA塩基配列決定法に関する講義
A.B.全体
14:40 15:00 閉講式

交通案内

  • 「秋葉原駅」よりつくばエクスプレス約45分「つくば駅」下車 路線バス約10分「環境研究所バス停」下車